生活習慣病の予防に役立つ健康法として、ウオーキングを実践する人が増えています。
しかし、健康維持になぜ役立つのか、どのくらいの時間歩けばいいのかなど、
詳しく知らずに行っている人が多いのではないでしょうか。ウオーキングに詳しい東京学芸大学の宮崎義憲教授は、「(方法や効果の)正しい理解が必要」と注意を促します。
ウオーキングは、マラソンなどの激しい呼吸をともなう無酸素運動とは違い、
老若男女問わずできる有酸素運動です。それがなぜ生活習慣病予防に有効とされるのでしょうか。「理由は生活習慣病の原因となる脂肪の燃焼効率にある」と宮崎教授は言います。
人は体を動かすと、糖質と脂肪をエネルギーとして使います。その使われ方は、運動の種類によって異なります。
無酸素運動で使われるのはほぼ100%糖質です。これに対し、有酸素運動では糖質と脂肪の両方が使われ、ウオーキングのようにゆっくりした運動ほど消費エネルギーに占める脂肪の割合が高く、効率的なのだというのです。
ただ、「無酸素運動にならない範囲なら、普通に歩くより心拍数の多いジョギングの方が、効率はともかく、脂肪の絶対的な燃焼量は多い」と宮崎教授。ノロノロと歩くのではなく、心肺機能や筋力の余裕に応じて速度を決めるのがよさそうです。
脂肪は燃え始めるまでに時間を要することも知っておく必要があります。
「ウオーキングを始めてしばらくは糖質が消費されます。
脂肪が燃え始め、一定の効果を得るには、30分は歩いた方がよいでしょう」(宮崎教授)。
30分間続けて歩くと、約200キロカロリーのエネルギーが消費されます。
これは、日本人の成人が一日当たりに過剰摂取しているエネルギー量とほぼ同じです。
30分以上歩く習慣を身につけるのは大変ですが、英国では30分を朝、昼、晩の
各10分にわけても効果が同じだったという実験結果も出ています。
「10分でも歩くと体が温まります。家の片づけなど、何らかの形で体を動すと、
『アフターエフェクト』という脂肪燃焼効果が続きます」(同)。
歩く時間が足りなくても、体を動かすよう、心がけた方がよいと言います。
より効果を得たい場合、重い靴を履いたり、プールで歩くなど、適度の負荷をかけるのも効果的です。大阪体育大学の増原光彦教授は、「重い靴を履いた方が心拍数が上がり、脂肪燃焼の効果がある」と言います。
一方、「特に高齢者は筋肉トレーニングを優先すべき」とする意見もあります。
稲毛病院(千葉市稲毛区)の佐藤務・健康支援科部長は、5分程度でできるスクワットなどの簡単な筋トレ「レジスタンス運動」を提唱しています。ウオーキングは心肺機能の強化に役だっても、加齢による筋力低下を防ぐ効果は比較的少ないのです。佐藤部長はウオーキングの効果を認めつつ、「同じ時間・距離を歩くと筋肉のある人の方が(代謝がよく)効果が得られます。それに(高齢者は)筋トレしてからウオーキングしないと、体が変形して逆効果になります。両者のバランスよい組み合わせが大事」と指摘します。
ウオーキングには、老若男女問わず、特別な施設や器具も必要なく、関節や筋肉への負担も少ないなど、利点が多くあります。中村好男・早稲田大学スポーツ科学部教授は、「実現可能かどうかを考えても意味がある」と日常生活で多くの運動を継続して行う難しさを指摘します。漫然と実践するのではなく、自らの体力や生活スケジュールと照らし合わせつつ、継続させることが重要です。
2007年11月26日 フジサンケイビジネスアイより抜粋